思い出の詰まったもの
「思い出のたくさん詰まった○○」という表現をよく聞くかと思います。
本を読んでいても、テレビを見ていても耳にする言葉です。
私はそれをあまりにも頻繁に耳にしすぎて、いつのまにかその大切さを
軽んじてしまっているのでは?と気づかされました。
うちの長男がサッカーを始めて最初にシーズンが終わりそうな時期になってきました。
「来週からサッカーだから準備しなきゃ」と、スポーツ用品店に買い物にいってのがつい最近のように感じます。
「好きな色選んでいいよ」という私の言葉に、息子は喜び、ひとつのサッカーボールを手にしました。それは人気のある色ではなく、私から見たら【変な色】に見えるボールでした。
黒地に黄緑のポイントの入ったそのボールに息子は【スイカボール】と名前を付け、練習の時も、遊ぶ時もそのボールを持って出掛けていました。
私は「どうせすぐダメになるんだから、次に普通の色のボールにすればいいや」などと思いながら見ていました。
先日、息子と一緒の時期にはじめた子のボールがボロボロになったと、新しいボールを持って練習に来ていまいした。もしかしたらうちの子のボールもボロボロになっているのかもと心配になり、スイカボールをよく確認すると、表面はすり切れ、色は色褪せボロボロになっていました。
「新しいボール買ってあげようか?」と息子に言うと、
「スイカボールがいい」と断られました。
しかし、練習の度にスイカボールはどんどん傷んでいきました。あまりにボロボロになってきたので、また息子を連れてスポーツ店に行き、「もう新しいボールが必要だから」と、説明して新しいボールを買いました。
しかし、息子はあまり嬉しそうな顔をしないばかりか、ちょっと寂しそうです。
「スイカボールは初めてサッカーはじめた時からずっと一緒だから部屋に飾っておいていい?」
私ははっとしました。
スイカボールには彼の思い出が詰まっていて、もうとっくに道具ではなく【思い出の詰まったもの】になっていたんです。
「はじめての練習の時に脚が痛くて泣いた」とか、
「練習試合ではじめてゴールを決めた」とか、
「大雨の中びしょびしょになって練習した」とか・・・
今シーズンの思い出がこのボールにしっかりと刻まれ、彼にとって大切な大切な思い出の品として手放さなかったのです。
ものというのは親子の場合、ほとんどが親が買い与える側で、子供は買ってもらう側です。親は親で買ったときに事や、それを買い与えた時の子供の嬉しそうな顔などが印象に残りますが、子供はその後ずっとその買ってもらったものと一緒に経験を積み重ね、思い出を刻みながら過ごしているんですね。
私はそれに気づかずに軽々しく「買い換えよう」と言ったことを反省しました。
スイカボールは息子が大きくなるまでずっと大切に飾っておくことにします。